続昆明留学記2 授業開始、テロ、両替、炉端焼、鍵騒動

9/13
貿易センターへ突っ込む飛行機、崩れ落ちる巨大な建物、
余りにも衝撃的な映像に夢ではないのかと目をこする。
ひっきりなしに甲高いアナウンサーの声と生々しい映像が流れる。
何がどうなっているのか判らないが、一時代の分岐点のような気がする。

今日から授業が始まる。

  

留学生は、ざっと、4,50人、その70%は日本人。
中国語のレベルによって、初級班、中級1班、中級2班、上級班に分けられる。
私は中級2班、去年は中級1班だったので奮発してみたが、
一時間目のヒアリングが全く聞き取れない、結局、中級2班へ逆戻りだ。
クラスメートは8人、日本人20代女性が三人、



30代女性が一人、
韓国人40代女性一人、タイ人20代女性が一人、20代日本人男性が一人。

事件を大きく報道している新聞を持ち込んだ先生を中心に輪が出来る。
新聞の中国語での記事が良く理解できないクラスメートが、
真剣な顔付きで先生を覗き込む。テロだ。
「中国は安全だけど、日本は第二第三の攻撃目標になるかも、危ないかもね」
の説明に悲鳴が上がる。

校門に沿った通りが学生食堂街、小さな店がいくつも並び、
路上には、肉まん、餃子、シュウマイ、焼き芋、
その他名前の知らない食料店が並ぶ。

  

午後、アンジンが両替すると言うので便乗する事にした。
中間達は、大抵、両替は闇屋を利用する。
待ち合わせたのは学校の正門前、
浅黒い顔立ちの見るからに精悍な面魂の女が自転車を転がしてやって来た。
彼女が闇の両替屋だ、30代か。
学生達が常連客なので、安全は安全だ。
立派な名刺を渡される。

「此処じゃあ何だから銀行へ行きましょう」
と先に立つ。
近くの中国銀行のロビー、目の前に窓口が並んでいる。
彼女は中央のソファに悠然と腰を下ろすと、
「それじゃー」
と言って札片を切り出した。
銀行のど真ん中で堂々と闇の両替だ。
こちらが辺りをチラチラ窺がうようだ。
このあたりも中国の怪奇なところの一つだ。

ちなみに、銀行で1000$が8000元位の時に、
闇相場だと8300元位になる。
300元有ると、二回くらい日本料理店で日本酒を一杯やれる。
節約すれば半月くらいの食扶持が賄えられる。
貧乏学生にとっては願っても無いことだ。

9/14
夜、早速、昔仲間、新しい仲間が集まって、炉端焼。
去年は珍しかった炉辺焼が学生向けの食堂街の道端に連なり、どの店も客が多い。
中国人の変わり身の早さ、流行への敏感さを感じる。

 



膝くらいの高さのテーブルが並ぶ。
真ん中の炉に真っ赤に燃え滾った炭がくべられ、
網の上に、いろんな種類の肉、豚、鳥、狗、羊等々、
そして、野菜、にが瓜、カボチャ、ナス、ジャガイモ等々、を焼く。
中でも、網の一番外側でじっくり焼いた臭豆腐が最高だ。
煙もうもうの中で、一本50円のビール、なんとも言えない。
最近は冷たいビールを用意してくれるようになった、これも時代の流れだ。


9/15
Aから怪しげなパソコン通信の繋げ方を教えて貰う。
どういう仕組みになっているのか判らないが、
直ぐ、メールが打てるようになった。
月末に国際電話料金の請求がドッサリと来るかも判らない。


9/16
家賃の払い込み完了。
学費も払ったので何となくい落ち着いてきた。
後は、三ヶ月の授業料で半年ビザが取れるかどうかだ。

中国で長期ビザを獲得する一番簡単な方法は留学生に成る事だ。
授業料さえ納めれば簡単にビザが下りる。
半分位の学生はこのビザを取る為に学生と化す。
だから、半月もしないうちに歯抜けのように学生達が居なくなる。
三々五々、中国各地へ散らばって行くのだ。


9/22
今日は週末、
Uの誘いで飲みに行く事になっていたのが、電話が来ない。
待ちきれなくてビールを買いに出る。
一ダースのケースをやっと四階まで担ぎ上げ、
はっと、鍵を持ってないのに気付く。
さあ、大変!!!
オートクロックを、又、やってしまった、通算何回だ。
我ながら情けなくなる。
しかも頑丈な二重ドアだ。
家に入れない。
寝巻きにスリッパ姿だ。

「落ち着け!落ち着け!」
と自分に言い聞かせる。
運良くお金を持ってたので助かった。
大家さんの家までタクシーを飛ばすしかないが、
一度しか行った事の無い家にたどり着けるか心もとない。

幸いかな、以前行った時に乗ったバスが目の前を走っている。
「あのバスの後ろを付いて行って」
そう言う私に運ちゃんが怪訝な顔で振り返る。

何とか大家さんの家のあるアパートに辿り着く。
「さて、どの棟のどの部屋だったか」
懸命に記憶を辿る。

それらしいドアをノックする、応答が無い。
「不在らしい、どうしよう?」
と、ドアが開いた。
しかし、大家さんではない。
「T?さんのお宅ですか?」
「違うよ」
と、ドアを閉めかかる。
「おお、T?さん、ね。 前だよ」
と顎をしゃくる。
T?さんの発音が悪かったらしい。

あらためて、前の部屋をノック、大家さんが笑顔で顔を出した。
「助かった」
週末の金曜日夜8時、
最近は中国の人も週末は家族で何処かへ出掛けるのが普通、
運良く大家さん在宅、鍵も有った。
やはり、日頃の行いが大事だ。

もしも、コンロの火でもつけっ放しで部屋に入れなかったら、
と思うと背筋が寒くなる、クワバラ クワバラ。

続く

 

  

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