続昆明留学記1 成田ー北京ー昆明、故宮、天壇
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昨日中国から戻ったばかりのTが、明日中国へ立つ私に鍵を渡しにやってきた。
Tの住んでいた昆明の部屋を明日からは私が引き継ぐのだ。
昨年の一年間、昆明で一緒に学んだ仲だ。
彼女は遅刻ゼロ、欠席ゼロの優等生。
ちなみに、私は遅刻常習、フラッと直ぐ欠席する最劣等生。
私が帰国した後、彼女は更に上級のクラスへ進んで昨日帰国したのだ。
そんな昨日の今日なのにエライこった。
せめてものお礼にと、
滝を眺めるのが何よりも好きだと言うTに伊豆の二つの滝を案内する。
萬城の滝
常連の滝
奥伊豆の露天風呂で暫しの日本の温泉との別れを惜しむ。
残念ながら混浴ではない。
夜は、行き付けの居酒屋で、Mちゃん、桂ちゃんも交じって乾杯だ。
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今回は、北京経由で昆明に入る。
北京には朋友のトシが居るからだ。
成田での身体検査で愛用のナイフを取り上げられる。
付いているビールの栓抜きが必需品なのだ。
北京へ着いたら返してくれると聞いてほっとする。
成田ー北京行きチケットが何処の航空会社よりも安いせいか、
余り評判の良くないパキスタン航空も満員だ。
機内ではアルコールが出ないと聞いていたのでワンカップを3本ほど持ち込む。
臨席のパコスタン青年、と思ったら41歳とか、よく喋る。
北京へ着くまで喋り通し、日本語も私より上手だ。
奥さんは日本人、日本在住14年、さもありなん。
「私の故郷はパキスタンの北部、日本人は余り知らないけど、
まるでスイスのような風景が広がってる所よ」
「日本の女性は細かくて参るよ、結婚すれば何処の国の女も皆同じね」
暫く、奥さんの愚痴と、日本女性とパキスタン女性の好悪、功罪を聴かされる。
ワンカップを渡そうとしたら手を横に振る。
久し振りの北京空港、全く垢抜けた、成田も顔負けだ。
私の名前を書いた看板を両手に掲げて運ちゃんのお出迎え、トシの計らいだ。
針葉樹の林を真っ直ぐに貫く空港からの高速道路も、
車が滑るように滑らかになった。
トシが玄関前で、相変わらずの恵比須顔だ。
○○公寓、
一つしかない入れ口にはガードマンの目が光っている。
一階には日本料理店、日本食品を置いたスーパー、
何よりも安全を保障する日本人駐在者家族向けの高級マンションだ。
ただ、家賃を聞いて腰を抜かす、日本の都心のマンションと変わらない。
これから昆明で私が住もうとしている部屋代の100倍近くだ。
行き合った子供連れの奥さんが目礼する。
一目で、日本人家族と判る物腰だ。
厚いジュータン敷きのだだっ広い部屋の中は有りとあらゆる家具、電気器具が揃っている。
日本人が日本と同じ感覚で生活が営まれるように配慮されているのだ。
高級料理店、心づくしの美味しい料理なのに、殆ど食えない。
ビールと紹興酒はたっぷり飲む。
同席の中国人のA君、トシの信頼する腹心らしい。
彼は日本へ9年間留学したが、その留学先が私と同じ、後輩だ。
私が在学した当時は物珍しかった中国からの留学生も今はウジャウジャ居る。
キャンバスの話が弾むがピーんと来ない。
劣等生だった私は何か引け目が有って、
卒業以来キャンバスへは足が向かなかったが大分様変わりしているようだ。