台北記8

当初、今日からいよいよ、単独行動の予定だったのが半日ずれる。
昨夜の予定だったS先生との会食が、ツアー一行を見送り方々、
中山正飛行場で行われる事に変更された為だ。

朝、昨夜の紹興酒は何処へ消え去ってしまったのだろうと思うくらいの清々しい頭で、
むしろ、いつもより少し早めに起きだした。
円山大飯店の辺りを散歩する。
丘というよりも、小さな山の上に立てられて、あたりを払っているので、
散歩で人里迄行くのには一寸、億劫な距離だ。
大きな門のあたりまで行き、[凄いなア!、凄いなア!]を連発して、
写真を撮りまくる。
Tさんの、お話では、元台湾神社の跡地とか、
日本人も、エライ事をするもんだ。

S先生がお見えになり、しばらく歓談の後、飛行場に向かう。
途中、2軒の御土産屋に立ち寄る。
今回のツアーには、日本の一流旅行社、現地の旅行社、
そして現地の旅行社に雇われた運転手、が関与、
これが[御土産]の重要な原価構成になるようだ。
それぞれに、3%位のマージンが支払われると聞く。
どうも、昨夜の搭乗員さんの涙も、これと無縁ではないようだ。
実は、同行のSさんが、職業柄、台湾の御土産屋さんと直接の取引関係があり、
我々は、例えば、一流メーカーのカラスミ、前回5000位したしたように思う、
が2500円で、皆購入済み。
それでも、人間の弱さなんだろうか、ついつい何かと手が出てしまう。
人間の欲望の順位、マルローだったかな、も、人とか、年齢とかで、
大分違うのではないのかな。
家に戻った今、まだ、開封もしてない物があるというのは、情けない。

飛行場で、S先生お心尽くしの会食。
タップリ時間を取って、一行、カウンターの奥に消える。

ガイドさん、寄り道するからと、別のバスへ。
S先生に、今夜の宿を告げると、先生にそこまで案内して戴ける、
ということに相成った。
台北駅までのバスの中、S先生、目下個展中のお疲れ中なのに、
私の質問に、いろんなお話をしていただいた。
書の専門的なお話は省略するが、
まず、
最近の私の書の芳しくない出来具合を、書の道具のせいにして、
何処か良い、硯、墨、紙、筆、のお店のご紹介をと、お願いしたら、

「硯はともかく、墨、紙、筆は、紹介できるようなものは台湾に無い。
台湾、中国は数々の混乱で、伝統が途絶えた、
従って、台湾、中国には、老舗というものが無い。
墨、紙、筆は、むしろ日本に伝統が息づいている。
日本には素晴らしい老舗が存続している。」
と時々、走り去る台湾の山河に澄んだ目を凝らしての、
淡々としたお話だった。
成る程と思うと同時に、逆輸入とはこうゆうことかと、変な納得だ。
恐る恐る、明日、先生の書のご指導風景を見学したい旨をお願いしたら、
「どうぞどうぞ」とのこと。

台北駅で、飛行場行きのバス乗り場はともかく、
駅の近所のホテル迄案内して頂いてしまった。
先生のお宅の地図も、事細かに承った。

さあ!
いよいよ一人になる。
カウンターで日本語7分どうりの女性の応対、NT$2400とNT$1350の、
NT$1350の部屋をお願いする。
日本円の相場は大体、4.2倍すればよい。
悪友から知恵を付けられた機内誌の切り取りを提示すると、更に30%引き、
多分、円山大飯店の1/4か1/5だろう。
チェックインを済ますと、もう、4時過ぎだ。
兎も角、表に出る。

つづく


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