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ラスコー記4

朝9時一寸前、まだPASTISが少し残っているようだ。
朝食9時まで、を思い出し慌てて食堂を探す。
内庭の反対側の食堂に入ると、20人位の女の子達、
小学校4年生位から高校の3年生くらいまでだろうか、
が両手を膝において畏まっている。
突然、美しいコーラスが始まった、素晴らしいハーモニーだ。
食前のお祈りなのだろうか、三部か四部合唱、実に見事としか言いようが無い。

食事を終って広場を歩く4、5人がハモっている、またこれが様になっている。
英語でもフランス語でもない、ドイツ語のようだ。
もしかして、何処かの合唱団?
何にかのグループが通るとそのどれもがハモっている。
私も少年の頃合唱の経験があるが、彼等の音はただ者ではない。
私がモタモタしているうちに彼等はバスに乗り込んで走り去った。


まずラスコーへ、
朝のモタモタのお陰でレセジに付いたのが11時過ぎ、ラスコーは目の前だが、
またお昼休みに掛かりそうだ。
ふと、右手を見ると、断崖絶壁の途中の横に長い断層の凹み、
2、300Mはあるだろうか、
そこに豆粒ほどの人影が動く、古代人の住居跡だ。















前を川、後ろに垂直な絶壁、
その断層の凹みを利用して古代人が住み着いていたのだ、
近くに有る博物館でその有様を説明してあったが、
有史以前から16世紀まで何等かの形で人間が住み着いていたのだそうだ。
竈、祭祀跡、戦具、人骨が生々しい、
いざ戦いの時には出入れ口を閉ざす工夫がおおらかな自然の中にあっての厳しさを伝える。
まだまだ、何層か砂泥の堆積に埋もれたままだそうだ。

ラスコー。
案内書にラスコー2と書かれている理由が現場に来て初めて判った。
30年ほど前、一人の少年と三匹の犬で発見されたラスコー、
一万年もの間人類との接触の無かった洞窟に描かれた芸術としか言いようも無い先史時代の絵画、
これに魅せられて押し寄せた人々、
その人々の持ち込んだ細菌で、ラスコーは「緑の黴」で虫食まれてしまったのだ。
今観るレプリカのラスコーからは生の感動は伝わってこない。
案内人の案内はお説教のようだ。

が、忠実に複製された動物達の絵の豊富さには脱帽。
今にも突進してきそうな4、5Mもある牡牛、おおらかに行進する馬達、
今まさに左右の敵に挑まんとする二匹の野牛、背丈よりも大きな角を持つ鹿の群れ、
、馬、山羊、羊、そのどの一つも止まっていない、 非凡なデッサン力。
どの絵にも、一万年、二万年前の人類の知性を覗わせる、決して獣では無かったのだ。
我々が先入観を持つ原人、クロマニオンではない。

















何十メートル、何百メートルも入り込んだ地中、当然生活の場では有り得ない。
偶然というか、
地中から湧き出る方解石の薄膜で絵の表面が覆われ自然の力で保護されてきたのだ。
それにしても、どんな人達が、どんな目的で、
どんな感情を持って、これらの絵を描いたのだろうか。
興味は尽きない。
いずれにしろ、有史以前の芸術家達に乾杯だ!


幾つかの小さな谷を花びらにした芯のように、
谷間にぽっかりと空が明るく開けたレゼジ、
屋外のレストランで一服する。











ゆったりと煙草を吹かす旅人達、この付近は古代洞窟の宝庫、
公開されている洞窟だけでも数箇所、非公開、未発見を含めたら無数といわれている。
何しろ一万年間にも渡るクロマニヨン達の生活の場だったのだから。

フィニャック洞窟。
シベリアで凍ったマンモスが発見されるまで、
ここの洞窟の壁に描かれたマンモスがマンモスだった。
実際に、生きたマンモスを観た人間が存在したのだ。



2.5KMを大きな電動のトロッコで入る。

 

トロッコの終点からまだ8KMか10KMだか洞窟は続いている。
要所要所に止まって、案内人が電池で示す先に、色々な動物画が姿を現す。
黒顔料、木炭?、で描かれた物、鋭利な刃物のような物で彫り込まれたもの、
そのどれもが鋭いタッチの一筆書きだ。







マンモスの鼻から背中、尾までの一筆書きの凄いデッサンに目を奪われる。
ところせましと馬、羊、パイソン、マンモス、山羊で埋まっている天井は壮観そのものだ。
これらの動物が彼等の関心の高い動物だったのであろう。



 

地下2.5KMも入り込んだ中で、ランプだけを頼りに描いたのだから畏れ入る、
当然、こんな地底で生活する理由も無いし、
何か宗教的な理由が有ったのではという説がある。


夜、昨日のバー、昨日と同じVIN,大体が昨夜と同じメンバー、
向こうの席から例の青年が親指を突き出す。
おカミさんも相変わらず一人一人の客に気を配っている。
和やかな居心地に釣られ少し過ごしたようだ。




624
有史以前博物館,名前が不確かだが、
レセジの名を世界的にした(と言っても私は知らなかったが)発掘現場をそのまま博物館にしてある。
3人の客に説明員が付いて説明してくれるのだが、さっぱり分からない。
3万年の間に出来た約11Mの断層にクロマニヨンの歴史が秘められている。
所々に火災の跡が見られる。
あの洞窟画を描いたクロマニヨンはこの断層の底の世界の人間、
と思うと気が遠くなる。

あと二つだけ洞窟を紹介しよう。
一つは、GROUTTE DE PROUMEYSSAC。
直径が5、60Mもある大小の球体を達磨のように重ねた空洞、







まるで達磨の胎内のような鍾乳洞、
天井から無数に垂れ下がる鍾乳柱、象の牙のように尖ったシャンデリア、

 

先端からは絶えず水滴が落ちている。
何億年も続く自然の営みは今も進行中なのだ。
時間のオーダーから見て、ほんの一瞬存在する人類が、
自然の営みのほんの一瞬を垣間見ているのかも知れない。
自然の創り出したシャンデリア、
それでなくとも華美なのに、更に色彩を添えた照明は演出過剰だ。

もう一つは、GROUTTE DE FONT−DE−GAUME。
ここは予約制だ、着いたのが3時、4時半の予約が取れて一眠り。
客は6人、フランス人の若いカップル、
イギリス人夫婦と小学校高学年くらいの女の子、
ガイドが
「何語で説明しましょうか? 日本語は判らないけど..」
と笑わせる、好感の持てる青年だ。
そのガイドが一つ一つ丁寧に説明してくれる。





100Mも入っただろか、二人の女が描かれている。
極端に乳と尻が大きい、この女人画は中国の古代文字に似ている。
俯き加減の女人の肩の線あたりの柔らかい線に共通点がある。
ほとんど性器だけの女も。
ガイドが一つ一つ
「判ったか?」
と念を押す、全員が
「イエス」
と言わないと次に進まない。
時々女の子が私と顔を見合わせて、ニヤッとする。
余りに何回も念を押すからだ。
ここは見る価値がある、夏場には前もって予約をしておかないと、
とても入れないらしい。


つづく

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