旅は楽しい! 貴陽・安順
芦笛鍾乳洞。
入口から如何にも観光地、
通路ではまだ幼い子供達が竹の笛を売りつける、
一掴み10元、5元、最後は5本出して1元というのを買う。
その後も、「持っている」と言っても体を押し付けて来る。
確かに見事な鍾乳洞だが、
中国人好みの7色の極彩色の照明が折角の自然をぶち壊す。
日本人のグループも交じっている、彼等にはガイドが二三人付いている。
帰りにも笛の押し売りがゾロゾロ、
最後まで付いて来た小学校高学年くらいの女の子に、
「バッキャロー!」
を浴びせられる。
「ケチ!」
位の意味だろうが目を見張る、吃驚だ。
この間の店で魚食べて、今後の予定を練る。
さて、貴陽、龍勝、安順どうするか?
龍勝と言うところに、素晴らしい千枚田?棚田?が有るそうだ。
周囲には壮族、猫族の部落が点在しているところとか、やたら行きたくなる。
しかし、バスで3時間、乗り換えて1時間、更に歩いて2時間、
タクシー借り切っても2、3時間は山道を歩くようだ。
現在の体調では難しそうだ。
結局、龍勝は諦め、貴陽までの切符を買う。
夜中の12時近くに着く列車しかないが何とかなるだろう。
(後日談:持参した案内書に龍勝千枚田の案内は載ってなかったが、
後で何かの機会に見た龍勝千枚田の写真の素晴らしさに唖然とした。
中国でも1,2を争う千枚田だそうだ、しまった!)
顔見知りになったホテル近くの雑貨屋でいろいろ仕入れる。
「マイルドセブンないか?」
と尋ねると、奥の方から持ってきた、贋物なのか、或いは普段は売れないのか。
50元札を出すと、
「これは偽札」
と丁寧に突っ返させられた。
奥さんと2人で偽札の見分け方を一生懸命教えてくれた。
以外に簡単だ、握ってみての音が一番異なる。
その後、2、3回、知らん顔でその50元札を出すと、何処でも偽札と見破られる。
諦め半分、良い記念と財布の奥に仕舞い込む。
調べてみると貴陽は見所が少ない。
結局安順へ行く事になるが、
貴陽の次ぎが安順、駅へ行って安順への変更を申し出る。
駅員の態度は頗る悪い、
「ブー(不)」
と言ったきり、忙しそうでもないのに、横を向いて理由を説明してくれない。
変更が効かないのか、満員なのか判らない。
3時にモーニングコール、
「判った!判った!」
と独り言を言って受話器を取ると例の「アンモウ」だ。
時計をもう見ると、何と1時、もう一度寝ようとしても寝付かれない。
ウトウトしていると、モーニングコール。
半分眠っているカウンターの女性、それでも笑顔だ。
ホテルのカウンターの女性の態度頗る良い、
何時も三人並んでいるが、笑顔を絶やさない。
詰まらない質問にも心行くまで答えてくれる。
ホテルの真ん前が駅、歩いて2、3分、流石に早朝の客は少ない。
日本人風の青年が目礼する、何処かで見た事が有るが思い出せない。
4人部屋の寝台車、上がさっきの青年、前は中国人の青年、前の上は中国人の若い女性。
6時、眠れない、食堂に行ってビールを飲む。
コップも無い、栓抜きも無い。
それが当然と言う態度の従業員、何人かでトランプを興じている。
現在、この「列車食堂」が社会問題化しつつある。
一応請負制だが、経営は国、人事権等全ての権限は国に有る。
彼らは国家公務員、
だから方で風を切る、不適当な従業員が居ても首を切れない、
責任の所在がハッキリしないのだ。
更に、国のおエラさんは無料、列車の従業員も只、従って料金は割高、
これらが、有望な事業とみなされ始めた「列車食堂」の経営を阻害している。
何とかウトウトして9時起床、上の日本風青年は韓国人学生、慎ましい。
常に読書している、広州で留学しているそうだ。
彼とは陽朔で会っている事に気付く、
ホテルの前の食堂で日本青年と議論していた若者だ。
前の青年は新進気鋭のビジネスマン、まだ若いがキビキビとしている。
名刺を呉れた、??副経理の肩書きが付いている。 書類と首っ引きだ。
上の17、8の頬の真っ赤な女の子は湖南から来たそうだ、岳陽が懐かしい。
流行の高踵、真っ赤な靴が通路にちょこんと並んでいる。
18時間は長い。
夜中に突然列車が止まる、窓の外を人が左右に駆ける。
近くの窓から覗き見ると、一人の男が蹲り、周囲を制服の男達が取り巻いている。
線路を歩いていた地民が列車に触れたらしい。
蒼白な顔だが大きな声を出している。
命には別状無かったようだが、凄い。
夜11時半、貴陽着、駅前のホテルにチェックイン、198元、カードOK。
朝、貴陽を一歩きして、バスで安順へ向かう。
私以外は殆ど地元の人達のようだ、騒がしい。
出発して直ぐ、目付きの悪い男が、二人ずれの1人の女に何か言って、
物凄い口論が始った。
通路の前から後まで行ったり来たりの押し合い、取っ組み合う。
周囲の人が宥めるが、仲々止めない。
やがて、男の方が押し下ろされる感じで車を降りる。
周囲の人が事情を聞いてるようだ。
経緯は解せないが、女は半泣き顔で大きなダンボールから煙草のカートンを取り出す。
「紅塔山」の銘柄、傍の男が何やら言ってその一箱を開き、周囲に配る。
どうやら本物らしい。
一人の男が交渉し出した、一箱100元、その内に85元、2、3箱買う人もいる。
と、前に100元で買った男が怒り出した。 結局、更に60元だしてもう一箱受取る。
その内に、周囲の人が交渉し出すと、一箱50元までになる。
と、彼方此方から手が出だす。
今迄買った連中も黙っていない、
50元に換算して追加して貰う、という感じで大騒ぎのなった。
隣の席の穏健実直そうな中年も苦笑いしながら二箱買う。
途中の駅につくと、女二人と、もう一人、
女に同情的に話し掛けていたもう一人の女が下りて行った。
走り出して気付くと、最初の方で、交渉した二人の男の姿も見えない。
誰かが、
「開けてみろ」
と言い出す。
何人かが開けてみると、やはり、紛い物らしい。
窓から投げ捨てる人も居る。
実に芸の細かい事をやる、旅行者では無い地元の人達を騙すのだから相当なものだ。
暫く感想話に花が咲いたあと、バスの中は嘘のように静かになった。
1時間半で安順、駅前でビールと餃子、〆て4.5元、地図1.5元、
店員の対応も貴陽と比べて素朴其の物だ。
駅の公安で黄果樹への行き方を尋ねる。
ここの公安も実に親切、
バスの乗り場、下りるところ、値段、時間まで親切に教えてくれた、
中国の公安で珍しい事だ。
黄果樹へ着く、閑散として人影も少ない。
右も左も判らない、若いトクトクのお兄ちゃんが寄ってきた。
近くの食堂に入りビールと紅焼魚、
色々の土地でこの紅焼魚を食べるがその土地土地の独特の味付け、
此処のは頗る美味しい、
適当に濃い味だが辛くも酸っぱくも無い。
さっきのトクトクの男も近くに坐って動かない。
案内書の簡単な地図に書いてある??賓館、何処に有るのか見当が付かない。
中国の観光地の最大の欠点は、
その土地の案内板、地図が見当たらない事だ、有っても実にそっけない。
結局件の男のトクトクに乗る、2元、
1、2分で着いた目指すホテルの門前でガードマンにトクトクを下ろされる。
乗り入れ禁止の様だ。
門から玄関までが長い、手入れの行き届いた広い敷地の向こうに立派な建物、
1人で行くと言うのに、男がカウンターまで付いて来る。
350元が最低の部屋、
「もっと安いの」
と粘ると、何処かに電話する。
「140元の部屋がある」
と言う、電話をしたところを見ると、他の宿を紹介してくれたのか?
「その男が案内する」
と言ってる。
何となく胡散臭くて好かないが、渋々男のトクトクへ。
ものの2,3分で道を挟んだ反対側のホテル、別館らしい。
3人部屋位を覚悟して部屋に入って驚いた。
確かに古めかしいが、今迄の三つ星で最高の雰囲気、
中国風の格子窓、高い天井、何よりも清潔。
広い部屋の大きな窓の向こうには、森の如くに立ち並ぶ見事な盆栽、
1000盆は下らないだろう。
以前はこのホテルの豪華部屋だった様な気がする。
これまた大きな、真っ白なタイル風呂にたっぷり浸かる。
スッキリして庭に出る。
盆栽好きのNさん辺りが観たらひっくり返るだろう。
一回りするのに小一時間も掛かってしまった。
此処のメイン、黄果樹瀑布の様子を探りに出る。
時間が遅いし、一寸、迷ったが入場料を払って入ってしまう。
長い階段を下りる、結構時間が掛る、もう7時に近く夕闇が迫ってきた。
しまった、此方を先に観るのだった。
暫く歩くと木々の間から、瀑布が垣間見られ出した。
流石に東洋一、巾100m近くに渡って帯状の滝が流れ落ちる、
白糸の滝を巨大にした感じか。
滝の真下に出る。
散歩道が有るが、薄暗くなってきたのに、足元のライトが灯されない。
懐中電池も忘れてきた。 危なそうなので後ろ髪を引かれるように宿に戻る。
ホテルの食堂、女の子達が寄ってきて、
「日本人?」
日本人は珍しいらしい。