鞍馬・貴船.
鞍馬鉄道が険しい山間を縫って鞍馬駅。

私が生を成して始めて読んだ小説が源義経、
確か作者は村上元三の少年向けの小説だったような気がする。
鞍馬寺で天狗と激しい稽古をする牛若丸、
夜な夜な五条の大橋に出没する弁慶に立ち向かう牛若丸、
白衣を風に靡かせ横笛を吹く牛若丸、
このイメージが私の中に出来上がっている。

さあ、鞍馬寺だ。
期待にこたえてくれるだろうか。

天狗の出迎え。

直ぐに山門、如何にも鞍馬、豪快だ。





少し上ると大きな神社が現れる。



多少険しい山中を予想していたがこれ程とは思わなかった。
急勾配の山服に、お宮や祠がへばり付いている。
本殿への参道は立派だ。





その参道を前後する親子連れが引切り無しに大声で話してる。
少し間を置こうと立ち止まると、どうしたことか、
敵も立ち止まる。
奥の本殿に辿り着くまでだ、
小鳥の囀りなどを期待していたのに。
そう言えば、囀りが聞こえてこない。

巨大な建物、これが鞍馬寺の本殿だ。



境内から望む山並は京都とは思えない。

奥の院へ歩を進める。

次第にイメージが一致してくる。
牛若丸が剣術の稽古に通う途中一呼吸置いたと言う息つぎの水、

奥州平泉で討ち取られた義経の霊が舞い戻ったと言う義経堂。

背比石、
牛若丸16歳の時、金売り吉次に伴われて奥州に向かう折にこの石と背を比べたと言う。
母、常盤御前との別れは涙を誘ったものだ。
三人の幼児、今若、乙若、牛若の命と引き換えに
夫、義朝を討った清盛の愛妾となった常盤御前、
義経に絡む女性の中で一番惹かれるのがこの女性だ。
選び抜かれた1000人の美女の中から更に選びぬかれた一人だったとか・・
常盤御前の墓と称される物は、京都、関が原、前橋等各地の散在する。
あたかも、楊貴妃の墓が幾つかあるようにだ。
余談だが、私の家の近所に彼女の長男、今若(後の日野全成)の墓がある。

物心着いた頃の牛若丸の心情を思い浮かべながら貴船に向かう。


僧正ガ谷不動堂。
一心に般若心経を唱える人が居る。



もう少しで見過すところだったのが木の根道、
人の情欲の絡みあった姿を連想する。

このあたりで牛若丸が天狗を相手に稽古をしたのだろう。
エイッ、ヤーッ、そんな気合が深い谷奥から響いてきて、また消えてゆくようだ。
昼なお暗い。

たった30分位の道程、少年時の感慨の蘇選らせてくれた鞍馬路だった。


貴船川の瀬音が次第に大きくなる。



改複中の貴船神社、ここの水占いは面白い。

占いの紙を小さな池に浮かべると文字が浮かんでくる。
大吉と出た。

さあ、貴船料理だ。
これこそ今回の京都の眼目だ。
客引きのお婆さんと交渉する。
焼鮎が食べたいのだ。
普通の川床料理に焼鮎を追加して4000円也、
とても食べきれないが、ま、いいだろう。




流れの上に据えられた文字通りの川床、
熱せられた黒石に守られた焼鮎、
絶品だ。
これだけで今回の京都に悔いは無い。

隣の席に若いアベックがやって来た。

彼らは素足になって川に足を漬ける。
私も真似してみた。
透きとおった流れが心地よく足の甲を撫でる。

店の玄関前に艶やかに開いているのは貴船菊だそうだ。





木の根路も歩いた、牛若丸も蘇った、鮎の塩焼きも堪能、
貴船川の床に座り、流れに足もさらした、
貴船菊も目にした。
ご満悦だ。


つづく

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