大原・宝泉院


三千院門前を左へ律川を渡ると、大原問答で名高い勝林寺、
これから訪れる宝泉院は勝林寺住職の坊院であった。









勝林寺の広々とした境内を見渡して素通りする。



宝泉院の門を潜ると樹齢700年の「五葉の松」が孔雀の如く枝を張っている。





虚子がこんな句を読んでいる。
大原や無住の寺の五葉の松
70年前は無住の寺だったのだろう。





足元の石地蔵から目を上げると、何故か法然上人衣掛けの石。





問答にお疲れだったのだろうか。
宝楽園なる庭を巡る。















諸々の花、花、花・・・





石組み、石橋、



ここにも一枚石の橋。







建物の入り口に「宝泉院」の額、



鶏毛の筆の寺の様だ。
直ぐ左手に鶴亀庭園、





一寸目には定かではないが、



二つの池が鶴の羽、飛び石が鶴の首、手前が鶴の頭になる。
築山が亀を模す。
(実は、案内の女性に教えて頂いた)

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客殿の前にこんな物があった。



丁度良い
お前はお前に丁度よい
顔も身体も名前も姓も
お前にそれに丁度よい
貧も富も親も子も
息子も嫁もその孫も
それはお前に丁度よい
幸も不幸も喜びも
悲しみさえも丁度よい
歩いたお前の人生は
悪くもなければ良くもない
お前にとって丁度よい
地獄へ行こうと極楽へ行こうと
行ったところが丁度よい
卑下する?もない
上もなければ下もない
死ぬ月日さえも丁度よい
仏さまと二人連れの人生
丁度よくないはずがない
南無阿弥陀仏

客殿に座り込む。
盤桓園(立ち去りがたい、の意)との名の通り座り込んだら立ち上がりにくい。
額縁庭園を眺め廻す。





柱を額に見立ての景観は如何にも大原の風情を醸し出す。
五葉の松の内側は流石に幹は立派なものだ。





東西南北が定かではないが、西方だろうか、
竹林を通して大原の風情が覗える。







抹茶を頂きながらたぷりと時間を掛ける。





この前来たのは何時だったろうか、
きっと、慌しく通り過ぎたに違いない。
何時か、雪の頃に、もう一度来たいと思う。

廊下で上を見上げる。
血天井だ。



関が原合戦の直前、
三成が攻めた伏見城で家康の忠臣鳥居元忠以下が憤死したが、
その際の血痕で染まる床板を天井に張り供養しているのだ。





恨めしそうではない顔が浮かび上がっている。

つくばいの手前に二つの水琴窟、理智不二との名がある。



竹筒に耳を当てると、
音程の異なる二つの音が心地よく奏でられる。













立ち去り難くてもう一度座り込む。













石橋を渡って五葉の松を振り返って宝泉院を後にする。

宝泉院


 

安房守の旅紀行・日本編











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