大原・三千院記
賀茂川から別れた高野川に沿って鯖街道を登ると大原、何年振りだろうか。
初めて来た時は何処かの民宿に泊まったがその場所は覚えていない。
まず、三千院に向ってゆったりと大原を歩く。
長閑だ。
ミツマタの花?
「棚田」と言う標識がある。
本当の棚田があるかも知れない。
もしかしたら、棚田さんと言うお家の標識かも、
なんて思いながら一寸歩くと大原が広がった、長閑だ。
呂川に沿って出店の連なる参道を登る。
桜にはまだ早い季節、人っ子一人居ない。
せせらぎの音が心地よい。
桜もボチボチだ。
昔、さっさと歩いたであろう道を、やっとこせっとこ登って、
三千院門前。
此処の風景は以前と殆んど変わっていないが、門前の一軒のお店が閉店している。
・・・京都 大原三千院 恋に疲れた女が独り・・・
この歌に魅せられて、初めて此処を訪れたのは何時だっただろうか。
そんな思いに耽りながら御殿門を潜る。
客殿から庭を眺めて、
未だ梅の見頃だ。
ボヤっとしていて何だかか良く判らない襖絵(下村観山の虹だそうだ)、
王羲之の大字拓本、
べったりと葉が地面に居座ってニョキニョキと茎が出て薄紫色の花、
往生極楽院、国宝の阿弥陀三尊、
かっては極彩色の極楽浄土に天女が舞う舟底形の天井も、今は焔滓で真っ黒だ。
ま緑の綺麗な苔の中に地蔵、笑っているが首だけなのが何とも不気味だ。
これは愛嬌がある。