近江記16
石道寺

高時川の支流沿いの石道集落を通り抜けると石道寺の駐車場、



谷を挟んだ向こう側の木立の中に石道寺が見え隠れする。
川辺に咲き乱れる紫陽花を眺めながらよく手入れされた石段を進む。









梅雨の季節の緑もまた良いものだ。





受付に中年の女性が二人、その内のお一人が案内に立ってくれた。
白州正子の随筆など見ると、
白州正子さんが訪れた当時は全くの無住だったらしい。
いそいそと案内されてお厨子が開かれる。
と、
今まさに嫁入りせんとしている花嫁さんがにっこりと艶やかな笑顔をのぞかせる、
そんな親しみの有る観音様が現われた。



よくよく眺めると、
おぼこでもない、お嬢さんでもない、
何処か強かな女、自信満々の花嫁様なのだ。
この自信は何処から来るのであろうか。
どんな困難でも乗り切って見せます、
そんなど根性、心構えがひしひしと伝わってくる。
平安中期の作とされる。

観音の足の指先が妙に気になる。
勿論、素足だ。
右の親指だけが天を向いている。
何か意味が有るのだろうけど判らない。

ただ、美しさだけにお目に掛かりたい、
それだけで湖北の観音様を訪れた筈なのに、
何故?どうして? などの興味が次々に湧いて来る。



案内のご婦人のお話では、
往時、この谷沿いに沢山のお堂が立ち並んだ壮大な寺院であったとか。





幾多の盛衰を経て、大正年間に現在の本堂に改築され、
お厨子と共に諸仏もこちらに納められた。
その際、旧本堂に使われていた用材の殆どを再使用したとのことで、





上部がやや窄まった円形の柱の一本ずつに其の面影を残している。
あの古代ギリシャの建築形式の柱を思い浮かべる。



湖北の田園風景を見やりながら帰途に着く。
今回は短期間で沢山の観音様を眺め過ぎて、聊か、消化不良気味だ。
特に、己高閣・世代閣は全く余裕が無かった。
いずれこの辺りを通ったらもう一度お伺いしなければなるまい。

小谷城跡の看板を横目に走る。
行き掛けに見損なった姉川古戦場に立ち寄る





この川が兵士達、いや、人間達の血で染まったのだ。
青く澄んだ流れはそんな過去を微塵だに語らない。


長浜の街を歩く。



























近江記・湖北編  完

 

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