近江記15
己高閣/世代閣

医王寺から高時川に沿って細い道を下ると大きな道に出た。
これが303号線らしい。
駐在所で己高閣への道を尋ねる。
若いお巡りさんが通りまで出て来て事細かに道順を教えてくれた。
案内標識が沢山有って判り易い。
最後に、鋭角になった坂道を登り切ると己高閣/世代閣だ。
守役の小父さんが何人か手持ち無沙汰に屯している。





鬱蒼とした森の中に神社、緑が香ばしい。
その與志漏神社の境内に己高閣/世代閣がある。
古い石の道が森の中に消えて行く、鶏足寺への道だろうか。
鶏足寺はとうの昔に廃寺になっており寺跡しかないそうだ。



裏手の山が己高山「こだかみやまと読む」であり、
かっては山岳信仰の霊場として隆盛を極め、
山中には多くの寺社があった。

時代の移り変わりと共に、多くの神社仏閣は無住となり、廃寺となる。
鶏足寺はその中心であり僧房120を数えたと言う。 
それらの寺寺に残された寺宝を安置保管する為に近年になって造られたのが己高閣/世代閣である。







守役さんが鍵を開けて中を案内する。
大小様々な仏像が並んでいる。



両館に収蔵されている仏像は大小合わせて97種と言う。
余りに多くの仏像があり、正直言って、
己高閣/世代閣のどちらにどのような仏像があって、
どのような印象を受けたか定かでない。

鶏足寺(けいそくじ)の本尊であった十一面観音立像。



兜跋毘沙門天。




魚藍観世音像。



魚藍、を調べてみた。
「魚藍とは魚を採る籠のことです。
昔、中国に魚採りの上手な美女が居りました。
彼女は沢山の花婿候補の中から仏様を深く信仰する男性を選び結婚しました。 
しかし、幸せも束の間、彼女は亡くなってしまうのです。
その後、その女性は観音様の変身である事を知り、
人々は魚藍観音として祀り魚が良く採れるようにお祈りしました。
毒蛇や悪鬼から人々を守ってくれる道中安全・海上安全の守護神です。」
とすると、
この観音様の性別はハッキリしている事になる。
もっとも、いろんな説があるらしい。
気が付かなかったが、魚籠をぶら下げている。
お顔付きも体付きも、確かに豊饒だ。
この観音様をお祈りしていれば海の幸、山の幸には事欠かない様な気になってくる。

薬師如来 十二神将

これだけの宝物を戦乱や寺社の興亡から守ってきた村民の信仰心の高さ、
その実践には頭が下がる。
守役さんが、
「この世代閣は全て自分たちで造ったのです、何処からの援助も受けていません」
と胸を張った。
戸数100戸あまりの村落で全てを支えていると言う。
60歳になると仏様たちの守役となり、
65歳になるまでの5年間のお勤めになるのだそうだ。
先祖代々受け継げられて来た観音様達への篤い思いなのだ。

続く

 

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