近江記6
正応寺
投網の小父さん、
橋の上に見物人が増えて勿体ぶったのか仲々網を広げない。
残念だが先を急ぐ。
次は正応寺、
先ほどの神照寺と同じ谷の中だ。
「この道を真っ直ぐ行って、○○で左に曲がって、川に沿って少し戻ってずっと行って右に曲がると、
田んぼの向こうに大きなお寺が見えます、それが正応寺です」
教えられた通りに行くと青田の向こうに、
山裾の森に包まれた一際目立つ建物、正応寺だ。
如何にも格調の高いお寺の様相を呈する。
階段をゆっくり上がって立派な山門を潜る。
正応寺には事前に電話を入れてある。
境内に数台の車が止まって居る。
案内を請うと、
いそいそと奥様らしい方が出て来た。
「拝観させて下さい」
「ああ、さっきの方ですね、すみません、
住職からの詳しい説明は出来ませんが、私で良ければ、
急に葬儀がはいったもので・・・」
「いえいえ、拝観だけで結構です」
にも拘らず、
忙しさを微塵だにお顔に出さないおっとりとしたご対応だ。
人柄か、土地柄か。