続々昆明記3 上海

「上海に着きましたよー」
の声に眼を擦りながらデッキへ出ると、
船は既に揚子江の支流に入っている。
両岸に懐かしい中国の風景、中国の匂い、中国の音も漂ってくる。





上海で、娘の友人の友人から昆明行きのチケットを受け取る事になっている。
電話すると、待ち合わせ場所はグランドハイアットホテルのロビー、
55階建てのビルを目指す。
食料を詰め込んだダンボールが重い、やはり、先に送っておくべきだった。
五つ星の豪華ホテルへ、よれよれシャツ、ドタ靴、おまけにダンボール箱を、
抱えて入って行くのは、気が重い。
一寸躊躇するが、チケットを受け取らなければ始まらない。

「お泊りですか」
と荷物を持ってくれたボーイに言葉を濁す。

最上階のロビー、流石に客種も、ちと、違う。
ウェイターやボーイの視線を感じながら、場違いの雰囲気の中で、



一杯1000円のコーヒー、汗が止らない。

彼女の顔を知らない、入ってくる女性一人一人を品定めする。
それらしいのがやって来た。
彼女は真っ直ぐカウンターに向うと、こちらを振り返り颯爽と歩いて来た。
旅先では女性が美しく見えると言うが、魅力的な上海美人だ。



このてとなら、
「一寸、上海で時間をつぶしても良いな」
などと頭の隅をかすめる、が、月並みな話をしながらチケットを渡すと、
「仕事中ですから」
と、そそくさと帰って行ってしまった。
途端に、ドッと疲れが出て来た。
まだ昼下がり、折角上海の真ん中に居るのに動くのも億劫になる。

結局、空港へ直行、半日、時間を持て余す事になる。
そんな時のために持参した「項羽と劉邦」、これが面白い。
一気に上巻を読み終える。

つづく

  





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