大理・三塔、喜州

まず、歩いても行ける距離の三塔を目指す。
小母さんの客引きが、
「馬車に乗らないか」
と寄って来た。
北門を潜ると馬車が並んで居る。



例によって値切った馬車が、コトコトと走り出した。



前記の様に、大理は山から湖への傾斜地に有るので、坂だらけだ。
古い土塀を掻き分ける様に坂を登って少し北へ走ると三塔の正面だ。

前回来た時は何処が三塔の入れ口かが判らない位、ひっそりしていたが、
酷い変わり様だ、門前が喧騒の巷と化した。





名物の大理石の加工品を売る店が広場の片端を埋め尽くす。
三塔も真新しく塗り替えられて風流どころではない。

三塔へ入るのを避けて、少し戻り、三塔の見所と聞いている「三塔倒影公園」
へ向うと、さっきの馬車の御者が飛んで来た。
「三塔の入れ口はあっちだ」
と後ろを指差す。
「公園へ行くんだ」
と言うと、申し訳なさそうに頷いた。
来た道を三分の一ほど後戻りする。

「三塔倒影公園」の客は私一人、門番は三人居る。
名前の通り、池面に美しい影をゆったりと落とす三塔を眺めながら







直径が100m程の池をゆっくりと一回りする。
茶屋も開業休店だ。

公園を出ると、さっきの御者が待っている。
「何処へ行くんだ、近くに良い所が有るから案内する」
「喜州へ行きたいんだ」
「もっと、良い所が有るよ」
「いや、喜州だ」
「よし、行ってやる」
喜州までは20km程有り馬車では時間が掛かりすぎる。
「いや、バスで行くからいい」
暫く、熱心に付いて来たが、振り向き振り向き、帰って行った。
大理古城近くの見所は、歩くのには一寸距離が有り、馬車が丁度良く、
一旦、馬車を使うとそのまま幾つか廻るのが自然なのだろう。

山側から湖側に少し傾斜が有りそうな道をミニバスは猛烈なスピードで走る。
左に聳える山脈、右に広がる湖、仲々に見ごたえのある車窓の風景なのだが...
時々、ひっそりと佇む村落を通り抜ける。

喜州は古来からの大理の軍事・経済の要所、白族の古い軒並みが随所に残っている。
もう一つは、白族の民族料理「海水煮海魚」が食べてみたいのだ。

バスを降りたのは普通の民家のど真中、右も左も判らない。
通りかかったバイクタクシー、小母さんの運転だ、メモに、
「三方一照壁」
と書いて渡すと、おばさんは無愛想に頷いた。
姿格好の割には大きなエンジン音を出して、ものの、4,5分して着いたのは、
ちょっとした広場、どうやら、此処が喜州の中心らしい。
近くの露店のおばさんにメモを見せると、
「そこだよ」
と顎をしゃくる。

「三方一照壁」、どんな意味なのか興味が沸く。
民、清時代の貴族?豪族?豪商?の旧居だ。
白族の旧居らしく白が貴重だ。
ただ、中国の古い家屋に見慣れたせいか、オッ、と言うような感動は覚えない。





シーズンオフで客は疎らの上、私がいかにも貧しい中国人に見えたのか、
案内の美人達は座り込んだままお喋りに忙しい。



思い切って尋ねてみた。
「三方一照壁って何ですか、何処に有るのですか」
女性の一人が立ち上がって案内してくれた、
「此処です」
と言って何か説明して、またお喋りに戻った。

一寸した広場を挟んだ三方にこの字型に三階建ての部屋、残る一方が白壁になっている。





白壁の上端と両端に帯状の書画、バックの青が鮮やかだ。
当然、観賞用だろうが、
どんな人たちがどんな気持でこの壁を眺めていたのか興味が沸く。
姿形は変えても竜安寺の石庭を連想する。
二階の欄干から眺めているうちに、何かわびの様なものも感じ始めた。

 







つづく

 

  

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