日本料理 鴎の乱舞 お別れ会 書画骨董街

11/19
また新しい日本料理店が出来た。
早速、中国人の女子学生Bちゃんを連れ立って行ってみた。
今度の店は、昆明でも相当の郊外、古い町並みを通り過ぎて、
田園風景が広がり始める辺り、「石庭」の名が示すとおり、
日本庭園らしき庭造りの店だ。



Bちゃん、初めて見る日本庭園に喚声を上げる。
案内のお嬢さんの和服に、また、喚声。



「一寸、触らせて」
と、盛んに弄っている。
以前、内のカミさんからプレゼントで浴衣を貰って、
知り合いの日本人のおばさんに着付けてもらった事があるが、
色鮮やかな本格的な和服姿は始めて見るそうだ。

案内された部屋は数奇屋風の畳敷き、
Bちゃん、初めての畳敷きが余程珍しいのだろう、
ねっころがって足をバタバタさせて、また、キャーキャーだ。
「映画で見るのとは全然イメージが違う」
そうだ。

メニュー、懐石料理が200元から980元。



980元は日本円でざっと15000円、日本でもまあ高級の部類だろう。
普通の中国人の給料一カ月分、こんなのを食べる中国人は居るのだろうか。
日本人相手にしては場所が辺鄙過ぎる。
それでも、一組の中国人グループを見掛ける。

当然、安めの一品料理を注文。



Bちゃん、生物は苦手だ、刺身を右から眺め左から眺め、
暫く、箸で弄くりまわしていたが、意を決したように口へ運ぶ。
目を白黒させている。

いきなり、隣の襖が開かれ、和服姿のお嬢さんが二人、
扇子を抱いて立っている。



音楽が鳴り始める、五木節?、
二人は踊りだした、日本舞踊だ。
Bちゃん、これにも驚いたらしい。
目を見開いてにじり寄る。
お世辞にも、巧さも色気も無いが、懸命に踊っている。
精一杯のサービスなのだ。



しかし、我々とさっきの一組以外客の出入りは無い、
ここも、何時までもつだろうか。
帰り、玄関でキチンと並んで最敬礼をされる。


12/3
今日の授業は課外授業。
学校の正門前に集合、何時も遅れてくるのはタイ人のY。
タイ時間だ。

坂を登って降りると、翠湖公園。
此処は、明時代のこの辺りの統治者の別荘跡が公園になっている。
大きな湖の中央の島を結んだ何本もの堤が遊歩道となる。
毎年、この時期になると、シベリヤ方面から鴎が渡って来る。
その数は20万、30万匹とも言われる。



広い湖面が鴎で真っ白に埋まる。
何かの拍子に一匹が飛び立つと、何万匹の鴎が一斉に飛び立つ。
壮観だ。
2,3分乱舞して、また、湖面に降り立つ。

湖の周囲に並んでいるのは鴎用の餌屋、一包みのパンだ。
パンを契って空に投げると、鴎がそれをめがけて次々に飛んでくる。
目の前、1mも無いほどのところを、羽音を唸らして飛び過ぎる。
空中で見事にパンを捉えるのだ。



何年か前、一人の老人が毎年毎年根気良く餌付けをしたのが始まりだそうだ。
此処を舞台にして、
老人と荒んだ少女との触れ合いをテーマにした映画も作られている。
中国人は鴎好きなのか、
鴎の文字を取り入れた男女の名前を良く見掛ける。

木陰でマージャン、トランプに興じる老人、





結婚式を挙げた男女、枯蓮、水尾をつくる水鳥、
公園の裏側は一転して、静寂そのものだ。

12/5
急遽、日本へ帰る事になった。
最初8人居た同級生も今は6人、其の半分が今週で昆明を離れる。
ささやかなお別れ会は韓国料理だ。
それぞれが将来の抱負を述べ合う。





O:結婚して子供生んで平安に暮らす、旦那さんより早く死にたい
N:もっともっと、世界中の遺跡を見たい、仏教を突っ込んでみた
Y:タイ料理のお店を持ちたい
U:一生笑って元気で過ごせるような環境を作りたい
T:とりあえず、中国語、民俗学をマスターしたい、その後の事は考えてない

簡単明瞭な言葉の中にそれぞれの個性が滲み出ている。
たったの三ヶ月だったけど、楽しかった。

今回は昆明に六ヶ月滞在予定、最初の三ヶ月は中国語を勉強して、
あとの三ヵ月は昆明を拠点に少数民族巡りをする予定が大幅に狂ってしまった。

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12/9
北京は寒い、零下二度。
「昨日まで大雪でした、Aさんを会社まで送るのに、
普通は3,40分で行ける距離を5時間掛かりました」
運ちゃんも厚いコートを着込んでいる。
道の両側は雪で堆い。
夏の終わりはまだ緑で一杯だった両側も枯木立で向こうが透けている。

北京で一日余裕が出来た。
瑠璃廠の書画骨董店街を歩く。



タクシーを降りると直ぐ男が寄ってくる。
「良い骨董品があるよ」
日本語だ。
昆明では日本人に見られたことが無いのに何処で判るのだろう。
服装も同じ、持ち物も何時もと同じリック一つだ。
当然無視する。

この界隈は中国でも有名な書画骨董品店が並んでいる。



通りでTVの撮影中、日本で言う名所巡りか。
なかなか思い通りに撮れないようだ、何回も何回も撮り直す。
やっと上手くいった時、自転車が走ってきてカメラマンにぶつかる。
観客も思わず失笑。
可愛い女性ルポライターも顔付きが歪んで来る。
しかし、一旦、カメラに向かうとはちきれんばかりの笑顔だ。



此処へ来れば大抵の書画骨董、書用具高級品が手に入ると聞いているが、
一見さんでは無理だ。





何軒か冷やかす。
冷やかし過ぎて、買う羽目になる。
どうせ買うならと、
「この店で一番良い筆どれ?」
言値を半分に値切る。
「これは本当の高級品、値引きは8掛けまで」
どうしても譲らない。
諦めて戸口まで帰りかけると追い掛けて来た。
「いいよ、しょうがない、その代わり日本の友達に宣伝してよ」
と名刺を差し出す。



もう一軒、
十二支の刺繍の飾り、買う気が無かったので4掛けで交渉、
これも戸口まで追い掛けて来た。



日本からの観光客が多いのだろう。
日本での相場に慣れている日本人は無意識に買ってしまうであろうが、
昆明帰りの私には、とても言値では買えない値段だ。

夜、T宅で3ヶ月振りの乾杯。
私が滞在中に昆明に行きたいと言っていたTも、
結局、時間が無くて行けなかった。



現役で異国での責任者として朝も夜も無いT、退職して遊びに忙しい私、
双方にとって、あっという間の三ヶ月だった。
時間とは不可思議だ。

12/10
往路は満員だったパキスタン航空、帰りはガラガラだ。
サービスは至ってよろしい。
テロは怖いが、適当なハイジャックでも有って、何処かへ連れて行ってくれないか、
などと不謹慎なことを考える呑天気だ。

宅急便に荷物を預けて身軽になる。
新幹線で富士を眺めながらのワンカップ、やはり、日本は日本だ。



 



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