台北記12
台湾の書道教室

Tさんのご推奨の意図とは大分ずれたようだが、
台湾の一断面を深く覗く事が出来た快感が残る。
それにしても、美人が多かった。
勿論、じゃが芋を重ねたような子も、標準的な子も交じってるのだが。

今度のバスは今までのとちょっと異なる。
大通りの中央に分離帯があって、其の両側にバス専用道路が有る。
道の中央に立派な屋根付きの停留所がデンと構えている。
昔の都電を思い起こせばよい。そこを電車の代わりにバスが走っている。
この路線だけ特別のようだ。

先生のご指示の駅で下りる。
渋谷のちょっと横丁に入ったような繁華街だ。
名詞の裏側に掛かれた矢印に従って歩く。
この辺と、見当つけて、道を掃除していた若い男に道を尋ねる。
首を捻っていたが、次の次の角?と手真似で教えてくれる。
角から右に入って二軒目のマンションの二階の筈、
角の惣菜屋の女性に住所を示すと、
頬にてを当てて考え出した、其処へ、スクーターの若い女性がやって来て、
一緒に住所を覗き込む。
やがて、示したのは、さっき若い男に尋ねたあたりだ。
礼を言って、またもと来た方へ引き返す。
暑さが込み上げて来る。
コンビニでスポーツ飲料を一息に飲み干す。

ヤレヤレ、どうしたものか、
突然、スクーターが勢いよく走ってきて目の前に急停車した。
さっきの若い女性だ。
後ろに乗れと言う。
オッカナビックリ荷台に跨る。
何十年にもないことで、不安定この上ない。
遠慮しがちに肩のあたりにつかまると、動き出した。
さっきの惣菜屋の角を曲がると、彼女は、右手で指差しながら、
一軒一軒の番地を読みはじめた。
S先生宅の前で私を下ろした彼女は、
郵便受けのようなところの
ボタンのようなものをチョンと押す、と門が開いた。
大きく手を振って彼女は街の中に消えて行った。



二階に二つ扉があるが、何の表札も無い。
あれだけの先生なのだから、立派な看板でもある筈と思いながら迷っていると、
30代の女性が階段を上がってきた。
住所を書いた紙を示すと、
「ここです」
と日本語で言って、扉を開いた。

全身に笑みを浮かべたS先生に歓迎戴く。
20畳位の部屋に、
30、40代の主婦4、5人、を中心に老若男女、10人位が、
一心不乱に書いてる人、先生に添削していただいてる人、
墨をすってる人、壁に掛かってる先生の作品をジーと見詰めてる人、様々だ。
お稽古風景をしばらく見学する。
著名な先生の直接指導にしては、和気藹々としている。
一人一人と言葉を交わしながら、一字一字、丁寧に朱を入れる。





なんとも羨ましい限りだ。
私に流暢な日本語で話し掛けて来る女性が居るし、先生が平仮名で
「よろしい」
と朱を入れているのも不思議でならなかった、何のことはない、
後で聞いた話、先生のお弟子さん、日本の商社マンの奥さんが多いのだ。

つづく


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