続 麗江記5

夜、邵と春麗と落ち合う。
鐘と高も居る、想い出話を交えながら笑いの絶えない会食、
やはり、春麗が場を盛り上げる。





去年一緒に来た私の娘が、
「彼女は広末涼子に似ている」
と言っていた春麗、1年半経って、見違えるほど背も伸び、
胸の膨らみも立派な魅力的な女になった。
が性格はそう簡単には変わらない、 相変わらず騒がしく何やかやと世話を焼く。 
フランス語を話す付君、
上海大学に入学が決まっている和君という優等生のナシ族青年も交じる。 
もう一人の何君は、どうやら春麗のボーイフレンドのようだ。

このところ、彭さんの姿が見えない、邵に尋ねると、
「彼は独立して、自分の会社を持ちました」
そんな事情を知らずに、昆明から電話を入れ、空港への出迎え、
歓迎会まで開いてくれた彭さんの義理堅さには畏れ入る。 
歓迎会に知った顔が張と鄭の二人しかいなかった訳も判った。

残念なのは、あの曹の潤んだ瞳が見えない事だ。
彼女は麗江から更に300km、
チベットよりに入った迪慶チベット自治区の中甸に仕事に行っているらしい。  
去年、あれだけ、
「今度貴方が来た時は私が濾沽湖を案内します」
と言い切っていたのに、何か特別の事情が有るのだろう。
「何としても曹のガイドで濾沽湖に行きたい」
私が言うと、邵が顔を曇らせる、
「多分無理と思うが、明日電話を入れてみる」
と約束してくれた。
が、邵の約束は当てにならない、
悪気は微塵も無いのだが、余りに善人過ぎるのだ。
時々安請け合いをする。 
眼鏡の奥にいかにも人の良さそうな笑顔を絶やさない。



去年、寝食を共にした邵との一ヶ月間が次々に思い浮かんで来る。
毎晩煎じてくれた漢方薬、時には按摩をしてくたこともある。
五目並べは下手だった。
飲み込みの悪い彼は一枚のFAXを送るのに半日掛かった事も有る。
四川大学文学部出身の彼は歴史、文学に詳しい。
しかし、世事に疎くガイド仲間からは小馬鹿にされてる感もあった。
病人の気まぐれを包み込む彼の笑顔にどれだけ気が休められたか判らない。
彼が教えてくれた「濾沽湖情歌」、今でもメロデーを口ずさむ事が出来る。

邵と和を強引に誘ってホテルへ、
途中でナシ族の銘酒、イン(空のエが音)酒を仕入れて、飲み直しだ。
何年も何年も寝かして造るイン酒は紹興酒に近いが、
少し日本酒を入れて粘度を上げた感じで頗る飲み口が良い。
明朝早くから仕事の有る二人は頃合いを見て、
コップ半分ほどのイン酒を一気に飲んで引き上げて行った。

つづく

 


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