昆明留学記6・元陽棚田1


元陽棚田、話には聞いているが、兎も角、規模が凄いらしい。
昆明に来る度に、その棚田、棚田と思いは馳せていた....
バスで11時間だもんなぁー。

ついに、重い腰を上げる。
夕方6時出発に間に合うようにタクシーで乗りつける。
何時ものように中国時間、一時間待ちで7時に出発した。

昆明を出発すると、直ぐ日が落ちて窓外の風景も、ただただ、闇夜だ。
幅が50cm程の鰻の寝床、窓側の光った手すり一本お隣は妙麗の女性、
体温が伝わってくる間近さだ。 
元々寝相の悪いほうで、普段なら何回も寝返りを打つのだが、
変に誤解されるのが嫌で身動きも出来ない。

狭い通路を挟んだ反対側の野球帽の男は既に鼾をかいている。
今まで、夜行バスは避けてきたが、
元陽へ行くにはこの夜行バスしか選択余地が無いのだ。
急ぐ旅でもない。

随分長い時間走ったと思ったが、まだ9時、トイレが心配で寝酒も出来ない。
バスが休憩する度に外に出て空気を吸うのは私一人、みんな高鼾だ。

また時計を見る、12時、眠れない
突然、前の野球帽に時間を尋ねられる。
何時何分と教えると、彼はまた野球帽の庇を深く下げた。
どうも、私の中国語が通じたようだ。


元陽、
寒い、霧が立ち込めている、視界は50mくらいだろうか。
思ったよりも大きい街だ、車、ミニバスがごった返している。

早く横になりたい、豪霧の中、やっと尋ね当てたのに、
インターネットで調べてきた心当たりの招待所は満員、
にべもなく断れる。
「何時でも歓迎!」とかの情報は当てにならない。

当てにして来たもう一軒の宿を探し疲れて汚い食堂へ腰を下ろす。
ワンタンで温まって、そのもう一軒を捜し歩く。

大きな甕を並べて酒を売ってる店で尋ねる。
メモを見た親父は首を横に振る、通りががりの老人が加わったが判らない。
彼が別の宿を紹介してくれる。

屈強な女性のバイタクにメモを示すと、
「ウン、2元だ」
バイタクは猛烈な音を立てて走り出した。
「ここだ」と指差されたのは、さっきバスを降り立った目の前だ。

現在改造中の宿、奥を覗くと親父が出て来た、
40元、シャワーは有るが太陽熱利用、この天気ではままならない、
トイレは公衆、ほかを探す元気もない、夕方までぐったりと休む。

起き出して外を眺める。
霧で良く判らなかったが、厳しい断崖の村だ。



眼下に棚田が幽かに浮かんでいる。

  

応接間如き部屋に入ると、老夫婦と若夫婦、
そして、バスの中で時間を聞かれた野球帽夫婦と中学生位の女の子、

 

強引にその団欒に加わせられる。
野球帽は薬関係の会社員とかで薬に詳しい。
以前から興味のあった漢方薬の「三七」「田七」の違いを尋ねる。
これは三七と根と花の違いとか、もう一つしっくりこない。

中学生の娘さん、英語が上手い。
野球帽が娘さんに、あれこれ質問の注文を付けると、
娘さんが英語で私に質問する。
内容は、普通の中国人と同じ、
「何処から来た」「なんで来た」「歳は」「仕事は」、
身元調査みたいなもんだが、彼らの挨拶なのだ。

宿の若夫婦は近くの中学校の先生、
パナソニックビデオカメラので撮った棚田を映してくれた。
夢に見た棚田が画面に広がる。
「こんなに綺麗に棚田が見えるのは年に3,4回だ」
と言うことは、この豪霧の中ではお目にか掛かれないということらしい。

近くで仕入れてきた安い白酒で団欒は続く。
松下幸之助の話が出て来た、彼の思想が大好きなのだそうだ。


翌日、霧の中を歩き出した。
棚田は一旦諦めて、ハニ族部落探訪だ。
途中で二股に出た、どっちか判らない。
丁度、通り合わせたおばあさんに尋ねるが言葉が通じない。
書いたメモにチラッと目をやって首を横に振る。
お婆さんには字が無いらしい。
10分に一人くらいしか人は通らない、その一人がやって来た。
鋤を担いだ中年男、言葉は通じないがメモを示すと、
「あっちだ」
と指差した。

霧の中から棚田が現れる。

 

 

この棚田が上下に連なっているのだろうが、
50mくらいの視界の中だ。
ハニ族の先祖代々が積み上げた石が辛苦を物語る。

 

井戸らしいが一寸飲む気にはならない。
一時間も歩くと小さな広場、



片隅に四方に風が抜ける小屋、部落の入れ口らしい。
おそらく冠婚葬祭で賑あう広場だろう。

部落の中は石の道、ぐぐっと入り込む。
豚、鶏、犬、が石の道を左右する。

 



やがて、いろんな人が現れ出した。

 

 

 

額ほどの畑を耕す女、洗濯する男、

 

こんな所で一日でも過ごしてみたいと思う。
が、小店の一軒も無い、勿論、宿は無いだろう。


 

 

 



その昔の生活道だったと思われる古道が戻り道、

 



霧が少し減って僅かながら棚田が広がり出した。



 



そこはかとないムードの中を無心に歩いて宿に戻る。
行き逢った女達が霧に消えて行く。
チラリと振り返った目に邪気が無い。



続く

     



 
   
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