昆明留学記3・雲南大学2

「鄭成功」と言う映画の放映があった。
監督は呉子牛、主演は趙文卓(チウ・マンチェク)、
もう一人の主演である彼の母親役は島田陽子、
彼女の年恰好からしてわりに新しい映画らしい。
半分、活劇物だけど、仲々しっかりした見応えのある映画だった。
香港映画らしい。

一昨年、
アモイ(厦門)の丘の上から太平洋を見下ろしている
巨大な人物像を見たがこれが鄭成功の像だ。
彼の母親が日本人で「国姓爺合戦]の主人公と知って興味を持った。

鄭成功は、明から清へ移る時代に明に忠節を尽くし、
当時オランダの支配下にあった台湾を開放し列国の侵略から守った英雄として
中国、台湾では今でも人気のある人物だ。
何人かの中国の人に聞いたらみんな知っいる。
ところが、
「彼の母親は日本人だ」と教えると、
「まさか?」と怪訝な顔をしている。
中国政府は中国の英雄に日本人の血が入っているのは歓迎しないようだ。
香港映画らしいと見たのはこの辺の事情だ。

昨夜、一緒に飲んでいた女子学生が、突然、
「お先に失礼します」
と言い出した。理由を聞いてみると、
「今夜、寅さんの映画放映が有ります、絶対、観たいので....」

私も直ぐ帰って「寅さん」を観る。
このところ毎週金曜日に放映している。
今回のは第31巻、寅さんが坊主代行をするヤツだ。
先週は、[佐渡ナントカ??]、都はるみ競演のヤツだった。
寅さんの心情に同情したのか、都はるみの演歌に望郷の念を誘われたのか、
思わず瞼が厚くなる。
ところ変わっても人の心は同じだ。


風来坊主さんから電話が入る。
「新鮮な魚が入りましたから食べに来ませんか」
新鮮な魚と聞いて飛び付く、
魚の名前は忘れたが、日本風の醤油味だ。
味な事をされる。

個性豊かな二人の中国人お客さんが同席、
お一人は○○大学で英語を教えておられる、
同時通訳もこなされるとか、並みの英語力ではない。
もうお一方は、元中国空軍のパイロット、
一見堅物だが雑学に通じ話題が豊富だ。

ワイン、白酒、ウイスキーとしこたま飲んで、
部屋に辿り着く、何処をどのようにして戻ったのか記憶が無い。
翌日まで大失敗に気が付かなかった。

翌日は、
風来坊主さんの知人でもある陳先生宅の餃子パーテーに招待され、
二人でお伺いする事になっていた。
約束の12時近くなって、
何処で待ち合わせようかと電話を入れる。
電話口でパイロットさんが、彼は外出している、と言う。
何回か電話するが、まだ戻られていない。
約束の12時はトウに過ぎている。

暫くしてから彼から電話が入る。
「12時に、あそこで待っていました」
意味が判らない。
昨夜の記憶が、やや、蘇って来た。
昨夜の内に「あそこで落ち合いましょう」と決めていたのだ。
慌てて掛け付ける、彼はニコニコと平然たるものだ。

酒の上での失敗の経験は無い(つもり)、
平身低頭したが、自分自身が情けない。

気を取り直して先生宅へ。
既に7,8人の学生達が餃子作りの真っ最中だ。

 

 

世代が異なる若者達を眺めながら、
二人で持参のワインを空けてしまう。
餃子作りも、
それぞれのお国柄が有るようでそれぞれに少しずつ形が異なる。
韓国学生持参のキムチは一味違う。


麗江の朋友(曹建蔚)の妹さんに会う、名前は曹建寧。
彼女はモソ人で昆明の大學で学んでる。



モソ人は今でも母系家族の風習が残っている少数民族だ。
一昨年、モソ人の居住区である濾沽湖に訪れた時、
彼女のお兄さんにお世話になったが、謹厳実直な人柄もさることながら、
古代から引き継がれた伝統を頑なに守り続ける生活態度に感動したものだ。

極めて低レベルの私の中国語では、度々、理解できない場面が発生する。
と、彼女は英語で話し出す、その英語も流暢過ぎて私には理解できない。
古代の風習を健気に守っている少数民族が英語を使いこなす....
雲南は、古代から現代までの人類が同居している、そんな生活があるのだ。
そこがまたたまらない魅力のあるところなのだ。


風来坊主さんと食事しようと言う事になった。
曹建寧を同行する。



行き先は、吉(金が三つ)(サンズイに真)味城、難しい字を書く。
郷土料理を食べながら郷土芸能が観られる。
絢爛豪華だ。







口琴やら、席まで来てのいろいろなサービスがある。

風来坊主さんは、例によって、自転車で濾沽湖まで行った事があり、
モソ人の風習習慣にも詳しい。
それにしても、
昆明から麗江までは550km、更に濾沽湖まで100kmは有るだろうか、
険しい山、深い谷を幾つも越えて行かねばならない、
考えただけで気が遠くなる。
そんな彼だからモソ人(正確にはモソ人と普米族の混血)の曹建寧とは話が弾む。



親しい飲み友達が皆帰国してしまい、飲み友達に事欠いていたが、
風来坊主さんと実懇になって、その心配は無くなった。
今日は例のパイロットさんが、
昆明で一番安くて美味しい所へご案内してくださるとか。
10元で食べたい放題、火鍋と呼ばれる寄せ鍋みたいなものだ。
100種は越えるであろうだろうか、







肉、野菜などの惣菜を自分で好きなだけ選んで、
煮え滾った鍋にぶち込む。







雰囲気もあるのだろうが、どれもこれも、舌がこぼれ落ちる。
パイロットさんはこの店と親しいらしい、
奥の方から何か持って来て、鍋に放り込む。
パイロットさん、
「これはトンナオです」
と言うが判らない、風来坊主さんが教えてくれた。
「トンノウです、豚の脳です」



珍味だ、白子と鮟鱇の肝、これを合わせたように舌で蕩ける。
今でこそゲテモノは、少なからず、避けてはいるが、
その昔はゲテモノ通を志そうとした事もある。
旅先で、今まで口にした事のないものを食べる、
こんな時期も有ったせいか、豚の脳と聞いても、別に驚かない。
むしろ、その珍味さに驚く。



店の男の子や女の子の写真と撮る。
皆、天真爛漫だ。

 

 

時々、物売りが店の中にズカズカと侵入してくる。
玩具、靴磨き、中でも手製のジュース売りの出入りが激しい。



往来で揉め事が有ったらしい、
場末の繁華街だが、常に、公安員のパトロールがある。


風来坊主さんは、スリランカ、インドに旅立つとか、
自転車でスリランカを北から南まで縦断するのだそうだ。
東南アジアにも詳しくない私にはスリランカと言う国が有って、
しょっちゅう宗教対立で揉めている、位しか知識が無い。



幾日かして、麗江の曹建蔚から電話、
「今、昆明に来ているの」
早速、妹を呼び出した。



さて、何処かで食事となった時、あのトンノウが真っ先に頭に浮かんだ。
今考えてみると失敗だった。
さぞかし喜ぶだろうと思ったトンノウ、
彼女達は最後まで口にしなかった。
中国人なら誰でも好むものと思ったら大間違い、
中国でもトンノウはゲテモノの範疇に入るらしい。
彼女達はアルコールもいけない、
結局、一人でトンノウに満足し、白酒したたか酔ってしまった。


続く

   


 
   
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